多汗症の治療では、最初に塩化アルミニウム溶液による治療が勧められます。皮膚科に行く時間のない人にとっては、塩化アルミニウム溶液はネット通販などで入手できるので、自分でも出来るのが利点です。塩化アルミニウム溶液を使う場合の知識をまとめました。
1.塩化アルミニウム溶液とは
塩化アルミニウム六水和物(ACH)を主成分とし、5~6%のサリチル酸を混合した溶液が主体です。金属イオンが合成した沈殿物が細胞に障害を与え、表皮内汗管を閉塞するという仕組みで、汗を抑制します。サリチル酸が塩化アルミニウムの浸透を助け、サリチル酸自体も発汗抑制効果があると言われています。
2.塩化アルミニウム溶液による治療法
まず、患部を清潔にして水気をふき取ります。就寝前に患部に塩化アルミニウム溶液を塗り、翌朝、水で洗い流します。症状にもよりますが、数日~1週間後から効果が出始めます。手足の多汗症で重症の場合は、手袋やサランラップで被うと効果が出やすいようです。
効果が出るまで毎日塗り、効果が出たら、やめて様子をみます。一度、効果が出ると、大体1週間くらいは効果が持続します。効果が薄れてきたら、また塗ります。塩化アルミニウム溶液の濃度は、多汗症の部位によっても適当な濃度が異なります。
- 手の多汗症=20~50% 塩化アルミニウム溶液
- 足底多汗症=20~50% 塩化アルミニウム溶液
- 腋の多汗症=10~35% 塩化アルミニウム溶液
- 顔の多汗症=10~20% 塩化アルミニウム溶液
※日本皮膚科学会「原発性局所多汗症診療ガイドライン」より
皮膚の弱い方は、医師に相談して下さい。
3.塩化アルミニウム溶液による治療の効果
塩化アルミニウム溶液による治療は、多汗症全般的に効果がありますが、腋の多汗症に特に効果があると言われています。
日本皮膚科学会のガイドラインでは、以下のように報告されています。
238人の多汗症患者に(水生アルコールゲル+4%サリチル酸)を施行した場合
- 腋の多汗症(塩化アルミニウム20~30%)=94% に効果あり。
- 手の多汗症(塩化アルミニウム30~40%)=60% に効果あり。
- 足の多汗症(塩化アルミニウム30~40%)=84% に効果あり。
4.塩化アルミニウム溶液の副作用
塩化アルミニウム溶液治療で起こる副作用は、皮膚のかゆみ・かぶれ・湿疹などです。濃度や使用頻度にもよりますが、皮膚が弱い方は皮膚科で塩化アルミニウム溶液を処方してもらうのが安心でしょう。特に、顔に用いる場合は、唇や眼の周りなどの皮膚の弱い所は避けるようにしましょう。
塩化アルミニウムとアルツハイマー病との関係を指摘される場合もありますが、因果関係を報告した論文は現在の所ありません。塩化アルミニウム溶液を皮膚に塗ることで、血中の塩化アルミニウム濃度の上昇は認められなかったという報告があります。
5.塩化アルミニウム溶液による治療の費用
塩化アルミニウム溶液による治療は、皮膚科などの病院で行う治療と、塩化アルミニウム溶液を自分で購入して行う場合があるでしょう。病院で行う治療と、塩化アルミニウム溶液を自分で購入する場合の費用などの知識をまとめました。
皮膚科などの病院で行う治療
皮膚科や美容クリニックで治療できます。塩化アルミニウム溶液そのものは健康保険適用外ですが、治療費は保険適用されます。
治療費用
塩化アルミニウム溶液は、100gで1000円程度+初診料や再診料。治療費用としては溶液も含めて2000円程度。
自分で塩化アルミニウム溶液を購入する場合
インターネット通販では価格が様々です。濃度の種類も色々あるので、部位や自分の適したものを選ぶことが大切です。
オドレミン(日邦薬品)
塩化アルミニウム濃度:13%(25g:1000円)
テノール液(佐藤製薬)
塩化アルミニウム濃度:3.9%(30g:850円)ロールオンタイプ
塩化アルミニウム・塩化ベンザルコニウム溶液(新城薬局・製造販売医薬品)
塩化アルミニウム濃度:20%(100g:1200円)
http://shinjou.info/modules/pico/index.php?content_id=1
※塩化アルミニウム溶液は日光に当てると劣化するので、保存する時は日光を避けて常温で保管しましょう。
6.自分で塩化アルミニウム溶液を作る場合
欲しい濃度の塩化アルミニウム溶液が購入できず、自分で作りたいという方のために、作り方を紹介します。
薬局で、「塩化アルミニウム六水和物」を購入します。JIS規格の特級がいいです(25gで800円くらい)。工業用の試薬なので、普通の薬局では扱っていないことも多いようです。薬局で、精製水も購入します。精製水は無菌状態にしたものです。使い残しは使わないようにしましょう。
精製水に、塩化アルミニウムを混ぜます。混ぜる時の容器は、煮沸消毒などして、雑菌が入らないようにした方がよいでしょう。濃度は自分の必要な量にします。20%濃度なら、塩化アルミニウム20gに、精製水80ccを混ぜます。30%濃度なら、塩化アルミニウム30gに、精製水70ccを混ぜます。
かゆみやかぶれが出たら、使用をやめましょう。
多汗症には、塩化アルミニウム溶液は効果があります。適切な濃度のものを選んで、正しく使うことが大切です。心配な方は、皮膚科に行って処方してもらうのがよいでしょう。