多汗症でのボトックス注射の効果と副作用

多汗症でお悩みの方は、ボトックス注射による治療を考える方も多いでしょう。ボトックス注射の効果や費用など、気になりますね。多汗症でのボトックス注射による治療についての知識をまとめました。

1.ボトックス注射とは?

多汗症を解消したいけど手術はしたくないという方には、発汗抑制効果の高いボトックス注射は選択肢のひとつでしょう。ボトックス注射とはどのような治療法なのか?ご紹介します。

一般的にボトックス注射は、A型ボツリヌス菌毒素(BT-A)製剤の注射のことを言います。ボトックスとはBT-A製剤の商品名(ボトックスビスタ)で、BT-A製剤には数種類あります。日本では、ボトックスとディポートという薬剤がよく使われていますが、ボトックスはディスポートの1.5~4倍の効果があると報告されています。

ボツリヌス菌毒素は、グラム陽性菌が産生する神経毒素です。毒性は除いて、神経末端に結合するという神経毒の作用を利用しています。ボトックス注射は、コリン作動性神経の接合膜からのアセチルコリン放出を抑制することによって、発汗を抑えます。

ボトックス注射は、もともとは眼瞼痙攣(がんけんけいれん)の治療や、美容外科などでシワ取りのために使われており、その後、多汗症にも効果があることがわかり広まってきました。

2.多汗症におけるボトックス注射の治療方法・やり方

ボトックス注射は注射した周辺の汗腺の発汗を抑制します。

汗を抑えたい範囲を決めて、注射位置をマジックペンでマーキングし、皮下注射します。およそ1センチおきにチクチク注射していくイメージです。注射前に痛み止めの麻酔をする場合が多いようです。麻酔については医師と相談してください。注射治療にかかる時間は左右で10分ほどです。この他に麻酔の時間がかかります。

3.多汗症の種類別~ボトックス注射の効果・症例

ボトックス注射をすると、数日後から発汗が減少していき、4~6ヶ月は汗がしっかり抑えられる効果が持続するとされています。その後徐々に効果が減少して行き、8ヶ月ほどで元に戻るといわれています。ボトックス注射の効果は、重症度や投与量などによっても異なります。ここでは、日本皮膚科学会「原発性局所多汗症診療ガイドライン2015年版」の報告をもとに、多汗症の種類別に治療効果を紹介します。

手足の多汗症 – ボトックス投与量と効果・副作用

19例(手にボトックス100U)=1ヵ月後、すべてに発汗低下の効果あり。副作用なし。

8例(手にボトックス28~46U)=80%発汗低下の効果あり。5ヶ月効果持続。副作用なし。

27例(手にボトックス60U)=全てに発汗低下の効果あり。6ヶ月間効果持続。

重症の手足の多汗症1例(手足にボトックス90U)=発汗低下の効果あり。7ヶ月間効果持続。

※0.1ml=4U(ユニット)

腋窩多汗症の場合の投与量と効果・副作用

242例(腋にボトックス50U)=すべてに発汗低下の効果あり。4ヶ月は効果持続。副作用なし。

207例(腋にボトックス50U)=すべてに発汗低下の効果あり。4ヶ月は効果持続。3回繰り返し投与後の副作用なし。

頭部顔面多汗症の場合の投与量と効果・副作用
10例(額にボトックス86U)=発汗低下の効果あり。9例で5ヶ月は効果持続。副作用=一過性の額の筋力低下。

1例(頭部にボトックス200U)=発汗低下の効果あり。12ヶ月効果持続。

多汗症治療におけるボトックス投与量は、手足で50U~100U、脇で50Uが適当とされています(投与量は薬剤の種類によっても異なります)。投与量が多いと、効果は持続する傾向があるようですが、副作用も増える傾向にあるようです。

4.多汗症治療におけるボトックス注射の副作用

ボトックス注射を行うことによって重症化する様な副作用はないと言われていますが、投与量や部位、施術の仕方などによっても副作用の有無・程度に差があります。ボトックス(BT-A)注射の副作用は、薬剤の種類によっても異なる報告がされていますので、医師としっかりと相談する必要があります。ボトックスは薬剤の中でも副作用は少ないといえます。ボトックス注射は繰り返して投与する場合の安全性も確認されています。

ボトックス注射の主な副作用

ボトックス注射は適切に治療を行うことで副作用は少なくなるとされていますが、全く副作用がないわけではありません。

ボトックス注射の主な副作用は、

  • 握力や筋力低下が起こることがある
  • ボトックス注射後数日間、内出血や腫れが残る場合がある
  • シビレ感
  • 倦怠感・重い感じがするという人もいる
  • 他の所からの汗がやや増える
  • 腕の痛み

などです。

ボトックス注射による副作用は、重症化や長期化することはなく、多くは一過性とされています。

ボトックス注射の問題点 – 注射時の痛み

副作用ではありませんが、ボトックス注射の問題点として、注射時の痛みがあります。麻酔なしだと痛みがありますので、痛みを緩和するために、局所麻酔や麻酔クリーム、アイスパックでの冷却などが行われています。複数を組み合わせる場合もあるようですが、費用との兼ね合いもあるので、個別に相談してください。

5.多汗症の場合のボトックス注射の費用など

多汗症では、2012年11月から、重度の腋窩多汗症についてはボトックス注射が保険適用となりました。それ以外の多汗症については保険適用外なので、全額自費負担となります。腋窩多汗症の保険適用の場合も条件があります。

また、医療機関によっては保険診療をしていない所もあります。多汗症のボトックス注射は、美容外科や形成外科で治療が受けられます。また、保険診療の場合は、使える薬剤や麻酔薬なども範囲が決められていますので、事前に相談するのがよいでしょう。

1回の費用

およそ6万円~8万円(注射する量、使用薬剤等により異なる)
※保険適用なら3万円位。
術後保証制度や、年間フリーパス制度などを導入している所もあるようです。

6.腋窩多汗症の場合のボトックス注射 – 保険適用の条件

重症の腋窩多汗症についてはボトックス注射が保険適用されますが、保険診療を行っている医療機関に限ります。確認してください。保険適用の場合は「腋窩多汗症」であるとの診断が必要になります。以下の6項目のうち2項目以上該当するのが条件です。

  1. 最初に症状が出たのが、25歳以下である
  2. 腋の左右の両方に発汗が多い
  3. 睡眠中は発汗がおさまる
  4. 1週間に1回以上、腋の多汗がある
  5. 家族歴がある(親や兄弟姉妹も腋多汗の症状がある)
  6. 腋の多汗の症状で、日常生活に支障をきたす

さらに、重症度判定(HDSS)があり、自覚症状から日常生活に支障を来たす程度を問われます。

  1. 発汗は全く気にならず、日常生活に全く支障がない
  2. 発汗は我慢できるが、日常生活に時々支障がある。
  3. 発汗はほとんど我慢できず、日常生活に頻繁に支障がある。
  4. 発汗は我慢できず、日常生活に支障がある。

多汗症診療ガイドラインでは③以上を重症度の指針にしています。

以上の診断基準を満たした腋窩多汗症については、ボトックス注射が保険適用されます。

多汗症で悩んでいる方にとっては、ボトックス注射は一定の効果のある治療法です。但し、疾患で通院中や服薬中の場合、妊娠の可能性など、詳細は医師に相談してください。またボトックス注射は、投与量や注射ポイントなど、経験や技量による影響も大きいようです。実績のある医療機関を事前に調べることも大切です。