顔面多汗症の治療と対策

顔から多量の汗が吹き出てしまうと人目が気になります。顔面多汗症は精神的な緊張を伴いやすく、悪循環に陥りやすい傾向もあります。こここでは顔面多汗症の治療と対策を解説していきます。

1.顔面多汗症とは~症状と原因

誰でも緊張すると顔や手足から汗が出ますが、特に顔からの汗が多量に吹き出るのが顔面多汗症です。体温調節のための汗と重なると、顔や額からしたたりおちるほどの汗が出ることもあります。顔からの汗は目立ちますので、気にしすぎたり、恥ずかしいと感じてしまうことがあり、顔からの発汗自体がストレスとなって、さらに発汗を増やしてしまうという場合が多いのです。治療や対策の前に、まず顔面多汗症の原因を知りましょう。

顔面多汗症の原因

手や足などの他の部位と比べても顔は汗が出やすい場所です。人間の脳は1200~1400gで、体重60kgの人にとっては2%程度に過ぎませんが、基礎代謝では脳が体全体の20%ものエネルギーを使っています。それだけ脳はヒートアップしやすく、放熱が必要です。

頭に近い”顔”や特に”額”などは、まっさきに放熱発汗する場所なので汗腺も発達しています。

運動不足など汗をかかない生活が長いと、他の体の汗腺の機能が低下してしまいます。全身からの発汗が上手くできないと、頭に近い顔の汗腺からの発汗が増えることになり、顔面多汗症の原因となります。また、顔の汗は精神的ストレスを招きやすく、「また顔に汗をかいたらどうしよう」という予期不安をもちやすいです。これが顔面多汗症の悪循環の原因となります。

また頭部顔面多汗症は男性に多いのですが、男性ホルモンは、発汗を促進する働きがあり、それも顔面多汗症の原因のひとつです。

顔面多汗症には、どのような治療や対策があるか以下よりご紹介します。

 

2.顔面多汗症 – 病院で行われる治療

顔面多汗症の対策として、病院での治療をする場合は、皮膚科に行って相談してみましょう。日本皮膚科学会では、顔面多汗症の治療について、以下のようなガイドラインを作成しています。

  1. ①塩化アルミニウム溶液(10-20%)を塗る治療
  2. ②内服薬(抗コリン薬:商品名 プロバンサイン)による治療
  3. ③ボトックス(BT-A)注射による治療
  4. ④交感神経遮断術による治療(条件付)

それでは、上記治療方法について個別に見ていきましょう。

塩化アルミニウム溶液(10-20%)を塗る治療

顔面多汗症での治療では、まず塩化アルミニウム溶液による治療が推奨されます。この塩化アルミニウム溶液は皮膚科で処方してもらう事もできますし、濃度の低いものであればインターネット通販で購入する事も可能です。

就寝前に溶液を顔に塗って寝ます。翌朝、水で洗い流します。眼の周りや唇など、皮膚の敏感な所は避けます。塩化アルミニウム溶液のアルミニウムイオンが汗腺の細胞膜に作用して、汗の分泌を抑えます。効果が現れるまで、数日~1週間くらいかかります。肌の弱い人は、医師に相談しましょう。

この治療法についての詳細は、「多汗症への塩化アルミニウムの効果」の記事をご参照ください。

 

内服薬による治療

発汗のしくみは、アセチルコリンという神経伝達物質によって汗腺に指令が伝達される事で起きるのですが、そのアセチルコリンの働きを抑えることによって発汗を減らすという治療法があります。

アセチルコリンの働きを抑制する薬が「抗コリン薬」です。日本で認められている抗コリン薬は、ファイザー製薬から発売されているプロバンサインというお薬になります。内服薬は血液を通じて全身のコリン作動性神経系の支配を受けている器官の働きにも影響します。ですから消化吸収・排泄が悪くなり、便秘や尿が出にくいとか、口が渇く、眼がかすむなどの副作用があります。

 

ボトックス注射による治療

A型ボツリヌス菌毒素(BT-A)製剤を皮下注射する治療法です。発汗は、アセチルコリンという神経伝達物質によって汗腺に指令が伝達される事で起こります。A型ボツリヌス菌毒素製剤は、コリン作動性神経の接合膜からのアセチルコリン放出を抑えることにより、発汗を抑制します。

ボトックス注射による治療では、注射した周辺の汗腺から発汗しなくなります。効果は半年ほどとされています。麻酔によって注射時の痛みも大分緩和されています。副作用として、シビレ感など残ることもあります。美容外科や形成外科で治療を受けられますが、顔面多汗症でのボトックス注射を行っていない所もありますので事前に確認が必要です。またこの治療法は経験や技量も影響するので、実績のある所を選ぶのがよいでしょう

ボトックス注射の詳細については、「多汗症でのボトックス注射の効果と副作用」の記事をご参照ください。

 

交感神経遮断術による治療

交感神経遮断術は、他の治療を行った上で、さらに本人の強い希望がある場合に限り、充分な副作用の説明をして納得の上という条件がついています。(日本皮膚科学会「原発性局所多汗症ガイドライン2015年改訂版」より)

胸部交感神経遮断術は、胸から内視鏡を入れて、発汗指令を伝える交感神経~汗腺の途中を遮断する手術です。発汗指令は、交感神経の末端からノルアドレナリンによって神経節に指令が伝わり、神経節がバトンタッチしてアセチルコリンという神経伝達物質で汗腺に指令を伝えます。

手の多汗症などでは、神経節後~汗腺の間を遮断するのですが、顔面多汗症では神経節の前の部分を遮断する必要があります。顔面多汗症に対する、胸部交感神経遮断術(ETS)の有効率は80%以上とされています。しかし顔面多汗症では、神経節後(T2領域)の遮断が必要なため、代償発汗(他の部位から発汗)の合併症が避けられません。つまり顔の汗は止まるけど、代わりに他の所からの汗が増えるということです。神経は一度遮断してしまうと元に戻りません。合併症など充分に説明を聞くことが必要です。

 

3.自分でできる顔面多汗症の対策

多汗症の中でも顔面多汗症の治療では、現在は医学的に即効性のある治療法が見当たらないのが実情です。それは、顔面多汗症は精神的要因が非常に多いということにもよります。ご自身の状況に合せて、生活習慣を改善するなどの対策が必要になります。自分で出来る、顔面多汗症の対策を紹介します。

緊張を抑える対策

顔面多汗症は緊張やストレスが大きな原因なので、それを抑えるのが対策となります。

刺激や緊張によって、自律神経の交感神経が過剰に働くと発汗します。自律神経は、交感神経と副交感神経がシーソーのように揺れ動いてバランスを取っています。強い刺激だけでなく、些細なことや慢性的な疲労・ストレスも交感神経が優位に偏り、発汗を促進してしまいます。

いつも「顔の汗が気になって不安」という状態は、慢性的なストレスに相当します。緊張やストレスによる顔面多汗症を抑える対策は、自律神経のバランスを整えることが大切です。ここでは、自律神経を整える対策を紹介します。

①腹式呼吸による対策

腹式呼吸を5分以上続けると、脳内にα波が発生してリラックスした安定状態が得られます。これはとても簡単で効果のある対策ですので積極的に実施しましょう。

やり方

おへそに意識を集中して、腹筋を使って息をゆっくり吐ききります。10秒位かけて吐き、5秒位で吸うのが目安です。α波は15分後頃にピークになり、20分くらい迄です。

②爪のツボによる対策

爪の生え際には、神経線維が密集しています。押すと一瞬、交感神経が緊張しますが、その偏りを戻そうとして副交感神経が作用します。自律神経のシーソーの作用を利用した反射の働きですから、どちらに偏っていても、バランスが取れる効果的な対策です。

やり方

爪の生え際の両側2箇所、2mmほど下に少し凹んだツボがあります。そのツボを、反対側の親指と人差し指で、両側から少し強めに押します。10秒ほど押し続けます。

顔面多汗症は、社会生活の上で大変負担になります。しかし顔面多汗症は精神的要因が大きく、即効性のある治療法が見当たらないのが現状です。過度な疲労を避け睡眠を充分にとるなど、生活習慣を見直して体調を保つことが顔面多汗症の重要な対策となります。それは同時にあなたの心身の安定につながります。