食事での異常な発汗は味覚性多汗症かも…

辛いものやスパイシーな香辛料などを食べた時は、誰でも汗が出ます。汗の量が異常に多い場合や、食事をするたびに汗が出るという場合は、味覚性多汗症かもしれません。味覚性多汗症について、まとめました。

1. 発汗の種類と汗が出る仕組み

発汗の種類

発汗は、その原因から3種類に分けられます。最も重要なのが、体温調節のための発汗です。

  1. 激しい運動の後や入浴後、暑い時に全身から出るような汗で、これを温熱性発汗といいます。
  2. 2つ目は、緊張や不安など、精神的要因による発汗で、精神性発汗といいます。体温の調節とは関係なく出る汗で、手や顔など、局所的に発汗することが多いです。
  3. 3つ目が、味覚性発汗です。わさびや唐辛子などの刺激物を食べた時に出る汗です。
汗が出るしくみ

汗が出る仕組みは、脳の視床下部という所が体温調節の判断をして、脳下垂体を経由し自律神経の交感神経を刺激して、汗腺に発汗指令を伝えます。原因が何であれ、最終的に汗腺に発汗指令を伝えるのは、交感神経節末端から分泌されるアセチルコリンという神経伝達物質です。

2. 味覚性多汗症とは

激辛カレーや唐辛子などを食べると、ほとんどの人が顔に汗をかくでしょう。これは生理的な味覚性発汗です。口の中の受容器が刺激され、その興奮が交感神経に伝わり発汗すると考えられています。また人によっては、少しの酸味、柑橘類やチョコレートなどの甘い物でも起こることが報告されています。

少量ならば生理的な味覚性発汗ですが、異常に汗が出る場合は、味覚性多汗症とされます。味覚性多汗症の症状としては、食事をすると顔や鼻に多量の汗をかく、刺激物でなくても汗が出る、食事の度に汗が出るなどの症状があります。

味覚性多汗症の原因と対策

味覚性多汗症の原因

味覚性多汗症の原因は、詳しいことはわかっていません。多くは、味覚性発汗に精神性発汗が加わったものとされています。「食べて汗が多量に出ると、困るな」という予期不安がある場合、少しの刺激で発汗しやすいと考えられます。ちょっとした味覚性発汗をきっかけとして、精神性発汗を引き起こすというわけです。

対策・対処法

味覚性発汗と精神性発汗による味覚性多汗症の場合の対策は、まず自分が汗をかきやすい食べ物を避けることです。精神的要因も大きいので、緊張するような状況での食事を出来るだけ避けるとよいでしょう。食事の時に、よく噛むことも大切な対策です。精神性発汗の対策には、疲労やストレスを溜めないこと、適度な運動や睡眠など生活リズムを整えることが大切です。症状が重い場合は、心療内科で相談してみましょう。

3. Frey症候群(味覚性多汗症、耳介側頭症候群)

「おたふく風邪」として知られる耳下腺炎の手術でも味覚性多汗症になる場合があります。

耳下腺や顎下腺周辺の手術や外傷・炎症により、耳下部分の発汗が多量になることがあり、これをFrey症候群(味覚性多汗症、耳介側頭症候群)といいます。

症状としては、食事をして唾液が出る時に、耳周辺の紅潮と発汗増加、ほてりなどがあります。症状の現れるのが、数ヶ月~数年後とかなり時間が経ってからなので、おたふく風邪の後遺症と気付かない場合もあるようです。時間が経ってから症状が現れるのは、神経の再生に時間がかかるためと考えられています。

耳下腺を支配する耳介側頭神経内の副交感神経が切断されると、周辺の交感神経経路に長期間かけて神経を伸ばして迷い込んで行きます。Frey症候群は、副交感神経線維と血管拡張線維が、エクリン汗腺と皮膚血管を誤って支配することが原因となって起こります。

4. 味覚性多汗症が起こる病気や後遺症など

味覚性多汗症は病気や後遺症によって起こる場合があります。病気では、顔面帯状疱疹、糖尿病性神経障害、中枢神経の障害、頸部交感神経節への浸潤などで、味覚性多汗症が起こる場合もあります。後遺症として起こる場合は、胸部交感神経遮断手術(ETS)の後の味覚性多汗症が報告されています。

胸部交感神経遮断手術(ETS)の後遺症で起こる味覚性多汗症

多汗症治療のための胸部交感神経遮断手術(ETS)の後遺症として代償性発汗が知られています。ETSの後遺症として、味覚性多汗症が起こる場合があります。

症状としては、顔の発汗、顔面紅潮、涙の増加、唾液増加、鼻粘膜分泌などです。通常の多汗症は、交感神経が刺激されることにより起こります。しかし胸部交感神経遮断手術(ETS)後でも起こる味覚性多汗症の症状から、味覚性多汗症は、顔面神経などの副交感神経も関る相互神経支配の可能性もあると考えられています。

胃切除後の後遺症(ダンピング症候群)による食事後の発汗

味覚性多汗症とは少し違いますが、胃切除後の後遺症として、食事をすると汗が出るという症状が起こる場合があります。

胃切除後後遺症のダンピング症候群です。冷や汗、動悸、脱力感、顔のほてり、腹痛、めまいなどの症状を起こすことがあります。食後すぐに起こる早期ダンピング症候群と、食後2~3時間後に起こる後期ダンピング症候群があります。

早期ダンピング症候群は、浸透圧の高いままの食物が腸内に急速に入ることで、引き起こされます。後期ダンピング症候群は、腸管からの炭水化物の吸収が増大して血糖値が急上昇すると、インスリンが過剰に分泌されます。それによって、逆に血糖値が低下して引き起こされるものです。

「食事をするのが不安」という食事の際の精神的ストレスが多汗の症状を促進する面もあります。

他の病気や後遺症による味覚性多汗症については、医師に相談してください。味覚性多汗症は、原因が判っていないため、今は効果的な治療法がありません。味覚性多汗症の多くは、味覚性発汗に精神性発汗が加わったものと考えられています。リラックスできる状況で食事をすることも大切です。