手汗は遺伝が原因!?徹底解明!

自分が手汗で悩んでいると、汗っかき体質が子供にも遺伝するんじゃないかと心配される方もいらっしゃるでしょう。遺伝するという人もいるし、遺伝しないという人もいるし、どちらなのが本当なのか?手汗と遺伝についてまとめました。

現段階では遺伝するという確証はない

結論から言うと、手汗(エクリン腺の汗)の多汗症が遺伝するという根拠は明らかにされていません。ただし重症の多汗症患者さんの場合は、家族歴があるケースが何割かあるということも事実です。もう少し詳しく見てみましょう。

(ワキガは遺伝するといわれていますが、手汗とは汗の役割も汗腺も違うので、ここでは手汗に絞って紹介します)

発現遺伝子や「家族歴」に関する報告

  • 佐賀大学の研究で、原発性手掌多汗症の患者のDNAをゲノム解析した結果、「疾患遺伝子と推定される」 という遺伝子を発見したという報告があります。遺伝の可能性はあるということを示唆していますが、まだ推定の範囲です。
  • 中国の調査では、重症患者の18%に家族歴があったと報告されています。※
  • ブラジルの調査では、原発性局所多汗症の医学生の50%に家族歴があったと報告されています。※
  • 交感神経遮断手術をした患者の65%に家族歴があったという報告があります。※

(※家族歴の報告はいずれも調査対象は局所多汗症なので、手だけでなく他の部位も含む)

佐賀大学の研究は疾患遺伝子そのものの研究なので、仮にこれが明らかになれば遺伝の根拠になるでしょう。「手汗の多汗症は遺伝する確証はないが、なんらかの家族的要因はあるかもしれない。でも断言できない」というのが現状です。

ただ、家族歴が無視できない程度にあるということは事実です。発汗遺伝子そのものではなく、肥満体質など、発汗しやすい条件の体質・気質が受け継がれるという可能性は考えられます。

また家族歴と言っても、家庭環境や生活習慣が家族間に同じ様に影響を及ぼすことも考えられます。

 

発汗しやすい体質・気質はあるのか?

発汗には、「温熱性発汗」、「味覚性発汗」、「精神性発汗」の3種類があります。肥満遺伝子に関しては特定されています。肥満による発汗は「温熱性発汗」なので、手汗以外にも発汗するでしょう。原因はそれぞれ違いますが、発汗に至るのは、交感神経が刺激されて、汗腺に指令がいき汗が出ます。交感神経が刺激されやすい体質があるとすれば、そうでない人より発汗しやすい体質といえます。

手汗の原因は精神的要因によるものが多い

手汗の多汗症の場合は、精神性発汗によるものがほとんどです。精神性発汗は、体温調節のための発汗ではなく、緊張・不安などの精神的要因で発汗するものです。緊張・興奮しやすい体質・気質があるとすれば、普通の人よりも発汗しやすくなるでしょう。緊張に関っているのは、交感神経のノルアドレナリン神経系です。

危機管理システムの見張り役~ノルアドレナリン

生物は生き延びて子孫を残すことが最大のお役目ですから、体内には沢山の生体防御反応が備わっています。その一つが、異常を素早く察知して、必要な部署に指令を出す『危機管理システム』です。

危機管理の見張り役が”ノルアドレナリン”です。緊張や不安などの精神的ストレスにも反応して、視床下部を通じて交感神経を刺激して、発汗を促します。ノルアドレナリンは生存維持の基本的な物質なので、進化的にも古く、それだけ全身で利用されています。

ノルアドレナリンが活発に働く人は、緊張しやすい傾向があるといえますが、それが即、手汗の多汗症につながるかどうかは別です。手汗の多汗症は精神的要因が大きく、環境など複数の要因が絡み合っていることが多いからです。

 

ノルアドレナリンの活発な体質は遺伝するのか?

神経系で働く細胞の数は膨大で、それぞれ必要な数は備えていますが、多少の個人差があります。

私達が生まれる時、両親の遺伝子をもとにして体内脳内には神経ネットワークの原型が用意されます。初期設定のようなものです。それぞれの神経系で働く細胞分布の初期設定は遺伝情報によります。

両親のどちらかがノルアドレナリン作動性の細胞が多ければ子供も多くなるということはあります。しかし両親からの材料が元なので、配置や数が必ずしも親と同じということにはなりません。

また神経ネットワークのつながりやすさや感度は、その後の刺激の有無によっても変って来ます。

ノルアドレナリンが活発な体質を受け継いだとしても、その程度は親とは違います。ノルアドレナリンが活発というだけで多汗症になるわけではなく、そういう体質に加えて、ストレスフルな環境、生活リズムが不規則などの要因が重なると、多汗の可能性が高くなるといえるでしょう。

ノルアドレナリンは汗腺への指令だけではなく、性格にも影響を及ぼす

ルアドレナリンは別名「怒りのホルモン」または「覚醒のホルモン」とも言われます。脳科学では、性格に影響を及ぼす神経伝達物質として[ノルアドレナリン・ドーパミン・セロトニン]が挙げられています。

ノルアドレナリンは哺乳類は神経伝達物質として利用していますが、人の場合は脳内神経伝達物質としても大きな働きをしています。ノルアドレナリンは細胞を興奮させる働きをし、脳内の覚醒に関ります。私達が活動しようとする意欲もノルアドレナリンのお蔭です。

ノルアドレナリンが活発な人の特徴

ノルアドレナリンが活発だと具体的にはどのような性格になるのでしょうか?以下のうちの10個以上当てはまるならノルアドレナリンが活発な傾向にあると言えるでしょう。ストレスを避ける・生活リズムや自律神経を整えるなど日頃からの予防対策が大切です。

  • 周囲の変化によく気がつく
  • 負けず嫌い
  • 感動しやすい(涙もろい)
  • 気が短い
  • 初対面が苦手
  • 新しい環境に馴れるのに時間がかかる
  • 早起きが苦にならない
  • 旅行などの計画を考えるのが好き
  • 義理人情に厚い
  • 正義感が強い
  • プライドが高い
  • 権威のある人や名言・ジンクスを信じ易い
  • 責任感が強い
  • 活動的
  • 人に指図されるのが嫌い

 

汗腺の数にも差がある

手汗を発汗するエクリン腺の数は地域によっても個人によっても差があることがわかっています。

汗腺は生後3歳頃までの間にどれだけ汗をかくかによって能動汗腺の数が決まると言われています。熱い地域と寒い地域では汗腺の数に差があり、フィリピン人では約280万個、ロシア人では約190万個という報告があります。

遺伝とは違いますが、寒い地域に親子代々住んでいると能動汗腺の数が少なくなるということは考えられます。寒い地域から暑い地域に引っ越して来て、全身からうまく汗が出ず局所的に発汗するという可能性は考えられます。

 

まとめ – 手汗は遺伝するのか?

  • 手汗が遺伝するという確証はない。ただ発病時期が思春期前の場合は遺伝的要因が考えられる。
  • 遺伝的要因としては、推定されている発汗遺伝子の可能性/交感神経が興奮しやすい体質が考えられる。
  • 交感神経に関るノルアドレナリンが活発な体質は遺伝する可能性はあるが、それが即多汗になるわけではない。
  • 精神的発汗の手汗は、環境の影響などが多く、遺伝的要因は低いと考えられる。

思春期を過ぎてから手汗が多くなったという場合は遺伝的要因の可能性はかなり低いと考えられます。確実に言えるのは、たとえ遺伝子があったとしても100%発現するわけではないということです。

遺伝かどうかは別として、手汗には自律神経が深く関っていることは事実です。生活リズム・自律神経を整えることは、全てに於いて良い循環をもたらします。