手汗(手掌多汗症)がひどくて病院に行こうと思っても、何科に行っていいのか?わからないという方は多いようです。
病院で何科を受診するかは手汗の治療方法によって変わりますので、どの様な治療方法があるのか?また、どの治療方法が現在の手汗の症状を改善するのに適しているのか?把握しておく必要があります。手汗(手掌多汗症)は病気として認められており、健康保険が適用になる治療もあります。ここでは診療科など、受診する場合に役立つ知識を解説していきます。
1.まずは皮膚科を受診しましょう
手のひらに異常な汗をかくなど、その原因がよく分からない状況では、病院に行くといっても何科が適しているのか迷うところですが、まずは皮膚科で受診してみましょう。皮膚科で多汗症の相談をすると、手汗の症状が遺伝などの先天性のものなのか、後天性のものなのか、問診などを通じて判断してもらう事ができます。
ここで、手汗の原因が特定の病気であると疑われたり、何らかの薬の副作用であることが疑われたりすると、内科に行くように薦められます。生まれつきの体質が手汗の主な原因だったり、緊張のし過ぎが原因であると分かれば、制汗剤や薬の服用といった治療を受けることになります。
自分の手汗がどんなタイプなのか知るためにも皮膚科での受診を行ってみてください。
2.ひどい手汗は「手掌多汗症」かもしれません
日常生活に支障を来たすほどの手汗は、「手掌多汗症」の可能性が考えられます。「手掌多汗症」については、日本皮膚科学会から「原発性局所多汗症診療ガイドライン」が出されており、診断基準や推奨の治療法があります。
原因や重症度によっても治療法が異なります。まずは、診療ガイドラインに沿っての治療が基本でしょう。このとき、皮膚科に受診するのが最も一般的といえます。他に、美容クリニックや整形外科などでも治療が行われていますが、それぞれの科・施設で対応できることが違います。
手掌多汗症の場合は精神的要因が原因の場合も多く、心理療法の併用が有効なこともあります。その場合は、精神科や心療内科などが適当となります。
また更年期障害など、ホルモンバランスの乱れが原因の場合もあります。その場合は婦人科に相談するのも選択肢となります。
3.治療法によって受診する病院(科)は変わります
「手掌多汗症」と診断された場合、推奨される治療方法は下記のとおりですが、治療方法によって受診する科が変わりますので注意が必要です。前述した通り、まずは皮膚科を受診して診断をもらい、医師のアドバイスに沿って治療法を選択すると良いでしょう。
推奨度 | 治療方法 |
---|---|
B | 20-50%塩化アルミニウム単純外用/ODT(塩化アルミニウム溶液を毎晩手に塗る方法) |
B | イオントフォレーシス (水素イオンを発生する容器に手を浸す方法) |
C1 | BT-A局所注射(50-100U/手掌)(ボトックス注射のことを指します) |
B | 交感神経遮断手術(※条件付き) |
他に併用療法として内服薬、神経ブロック、レーザー療法(推奨度C1)、精神療法(推奨度C1~C2)があります。
- A=行うよう強く勧められる
- B=行うよう勧められる
- C1=行うことを考慮しても良いが、十分な根拠がない
(「原発性局所多汗症診療ガイドライン」より)
推奨度A、Bの治療法は医学的根拠も十分あり、多くの人に有効なものといえます。推奨度Cは人によって効果の差があり、その理由が十分確かめられていないということです。
それでは、下記よりそれぞれの治療を何科で受けられるか、治療の概要を見ながら解説していきます。
①塩化アルミニウム溶液を塗る治療の診療科
治療内容
塩化アルミニウム溶液を処方してもらって、寝る前に手に塗り、朝洗い流します。手軽な方法なので、広く行われている治療法です。効果が出るまで数週間かかりますが、溶液があれば自宅で出来るので、頻繁に通院しなくてもよいのが利点です。肌の弱い方は、かぶれる場合もあります。
何科で受診できるか?
- 皮膚科
- 美容クリニック
健康保険
塩化アルミニウム製剤は健康保険適用外です。
費用
3000円~6000円程度の所が多くなっています。
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②イオントフォレーシス
治療内容
水に電流を流して水素イオンを発生させ、その中に20分ほど手を浸す治療法です。週に1~2回、10数回の通院が必要です。(症状によって通院回数が違います)効果が出るまで数週間かかりますが副作用がないのが利点です。ペースメーカーを使っている方、アレルギー、妊婦、骨折などで金属を体内に埋め込んでいる方は、必ず医師に相談してください。
何科で受診できるか?
- 皮膚科
※但し、イオントフォレーシスの設備がある医療機関に限ります。
健康保険
健康保険適用されます
費用
1回の費用は1000円~3000円くらいですが、10~20回程度の通院が必要です。
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③ボトックス注射
治療内容
汗腺に指令を伝達する物質「アセチルコリン」の放出を抑える治療法です。汗のひどい部分に注射します。1回の注射で4~6ヶ月の効果があるとされています。注射の数日後から効果がありますが、痛みが欠点です。握力や筋力の低下を伴う場合があります。適切な注入量の調整が必要なので、治療経験の豊富な所を選ぶことがポイントです。
何科で受診できるか?
- 美容外科
- 形成外科
健康保険
重度の脇の多汗症の場合に健康保険が適用されるようになりましたが、手汗の多汗症は保険適用外です
費用
健康保険が適用されない自由診療は医療機関によって費用は様々です。保険診療でも3万円位なので、自由診療では10万円前後の費用がかかる所が多くなっています。
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④交感神経遮断手術
治療内容
汗腺に指令を出す交感神経を永久に遮断する治療法です。全身麻酔で胸腔鏡を用いて手術します。汗を止めた部位以外の所から発汗する副作用(代償性発汗)の可能性もありますので、よく相談することが大切です。手術は、交感神経を永久に遮断してしまうので最後の手段といえます。重症で本人の強い希望があることが条件とされています。切断部位を工夫することで副作用が軽減される場合もあります。数日程度の入院が必要ですが、最近は日帰り手術の所もあります。
何科で受診できるか?
- 整形外科
健康保険
健康保険が適用されます
費用
保険診療で10万円前後(入院日数によって違う)健康保険の高額医療制度を利用すると入院費以外は限度額の支払いで済みます。
まとめ
“手汗の治療で受診する病院の科”をまとめてきましたが、いかがでしたでしょうか?
この様に、何科で手汗を治療するかは治療方法によって左右されますので、一概に“この科を受診すべき”とは言えません。一般的な皮膚科から美容外科・整形外科・形成外科・美容クリニックまで様々ですので、まずは皮膚科を受診し、症状にあった治療法を医師より提案してもらう必要があります。
それでは以下よりまとめに入ります。
- 手汗がひどくて医療機関(病院等)に行く場合は、まず皮膚科を受診するのが適切です。
- 手汗の治療法としては、まず推奨度Bの塩化アルミニウム溶液とイオントフォレーシスが勧められるでしょう。これについては、どちらの治療法も皮膚科で行うことが可能になっています。
- その上で、さらに必要があれば医師と相談して次の段階の治療法を検討するという手順になります。
次の段階の治療は、費用もかかり、副作用の可能性もあるので医師によく説明してもらうことが必要です。
手汗を物理的に軽減する(手術など)のは、医療機関での治療で可能ですが、手汗は精神的要因や肥満、ホルモンバランスなど他の要因が関っている場合もあります。他の要因がある場合は、手汗を物理的に軽減しても根本的な治療にならないこともあります。
かかりつけのホームドクター等(内科や外科)がいる場合は、まずかかりつけ医に相談するのが望ましいとされています。かかりつけ医は本人の病歴や状況等もわかっていることが多いので総合的な判断がしやすいからです。
ペースメーカーを使用している場合や、アレルギー、妊娠中などによってはできない治療もあります。他で治療中(服薬中)や持病をお持ちの方は、主治医に相談することをお勧めします。
参考までに、日本皮膚科学会「原発性局所多汗症診療ガイドライン」から診断基準を掲載します。「明らかな原因がないままの局所的な発汗が6ヶ月以上あり、以下の6症状のうち2項目以上あてはまる場合」を多汗症の診断基準としています。
- 最初に症状が出たのが25歳以下であること
- 対称性に発汗がみられること
- 睡眠中は発汗が止まっていること
- 1週間に1回以上、多汗のエピソードがあること
- 家族歴がみられること
- それらによって日常生活に支障をきたすこと