多汗症とはどんな病気なの? – 多汗症の種類と治療法

 

「やたらと汗が多いなぁ」と思っていても、普通よりちょっと汗かきなのか、病気なのか判りにくいですね。多汗症と言っても、種類も原因もいろいろです。ここでは多汗症についての知識を解説します。

 

1.単に汗が多いだけでは多汗症ではありません

汗は私たちの命を守るための体温調節機能ですので、汗の量には個人差がありますが、暑い時や運動をすると誰でも汗をかくものなのです。普通は全身から汗が出ますが、この様な状況で汗の量が多いと感じても、多汗症の可能性は低いと考えられます。

多汗症が疑われるケースとしては、

  • 暑くもなく運動もしていないのに多量の汗が出る
  • 全身ではなく局所的(例:手のひらだけ/わきの下だけ)に汗が多い

という場合です。

この様な状態が頻繁に起こるようであれば、多汗症の可能性が考えられますので、病院で受診することをおすすめします。

 

2.多汗症の種類

多汗症には全身性多汗症と局所性多汗症があり、汗をかく場所によって分けられます。文字通り、からだ全体に汗をかく場合を全身性多汗症と言い、手のひらや腋の下など限られた場所に汗をきやすい場合を局所性多汗症と呼びます。

また原因によっても判断が異なるのですが、多汗症は原発性多汗症続発性多汗症に分けることができます。原発性多汗症とは ―― 生まれもって多汗症を疾患している場合です(先天性)。原因の多くは遺伝によるものなのですが、幼い頃から発症するのが特徴です。続発性多汗症とは ―― 基礎疾患のある場合の多汗症のことを指します。薬剤性、循環器疾患、悪性腫瘍、感染症、神経学的疾患、内分泌・代謝疾患、末梢神経障害、Frey症候群などの原因が考えられ、いつでも発症する可能性があるのが特徴です。

ここでは、生まれもって多汗症を疾患しているケースについて説明をしていきます。

全身性多汗症

全身性多汗症の場合、ただ汗をかく量が多い体質だけなのか、または多汗症なのかの判断が難しくなっています。

年齢が原因で汗をかくケース

幼少期(~10歳頃)から思春期(~18歳頃)は代謝が活発になりますので、汗の量が多くなります。更年期(44~55歳程度)などになるとホルモン分泌の異常から発汗量が増える場合もあります。このように年代的な要因で汗をかく量が変化することもあります。

後遺症や体質などで汗をかくケース

胃切除など消化器手術後の後遺症などが原因で、食後に発汗量が増大することもあります。そして体質や生活習慣などで、交感神経が刺激されやすい環境の場合に、普通より発汗量が多くなる場合もあります。

他の病気を疾患していないか確認しましょう

全身性多汗症は原因を特定することが難しいのです。明らかに暑くもないのに頻繁に多量の汗が出るという場合は、まず基礎疾患がないかを確認しましょう。

➡ 本当に多汗症?実は…他の病気の可能性も!

局所性多汗症

多汗症の悩みの多くは、部分的に汗がでる”原発性局所多汗症”ですので、ここでは主に原発性局所多汗症について説明します。

原発性局所多汗症は、部位ごとに、腋窩多汗症(わきの下)・手掌多汗症(手のひら)・足底多汗症(足のうら)・頭部顔面多汗症(顔や頭)に分けられます。特定の部位から過剰な発汗がある場合を原発性局所多汗症と言います。

日本での発病率

  • 腋窩多汗症(えきかたかんしょう)… 5.7%
  • 手掌多汗症 … 5.3%
  • 足底多汗症 … 2.8%
  • 頭部顔面多汗症 … 4.7%

※平成21年度厚生労働省難治性疾患克服研究・特発性局所多汗症研究班・全国疫学調査による

【局所多汗症】自分できるチェック方法

日本皮膚科学会の局所多汗症の診断基準を紹介します。半年以上にわたり、以下の6つの項目のうち、2つ以上当てはまる場合を局所多汗症と診断しています。気になる方はチェックしてみてください。

  1. 最初に症状が出たのが25歳以下である
  2. 腋や手足など、左右対称して両方に発汗が多い
  3. 睡眠中は発汗がおさまる
  4. 1週間に1回以上、局所の多汗がある
  5. 家族歴がある(親や兄弟姉妹も多汗の症状がある)
  6. 多汗の症状で、日常生活に支障をきたす

このチェックで「局所多汗症かも?」という場合は、皮膚科に相談に行くとよいでしょう。皮膚科ではさらに発汗検査などをして診断し、治療方針を立てます。

3.多汗症の症状と原因

ここでは他の病気が原因となる続発性多汗症については触れません。原発性局所多汗症について、症状と原因を説明します。

多汗症の共通する症状としては、暑くもなく運動もしていないのに、特定の部位から多量に発汗するということです。汗腺の機能が悪い場合も、全身から発汗できずに、局所的な発汗が増える原因になります。運動不足や冷房の利用などで、汗をかかない生活をしていると汗腺が休眠してしまうのです。多汗症の種類によっての症状と原因をまとめました。

 

手掌多汗症・足底多汗症の症状と原因

思春期頃までに発症する例が多いとされます(平均発症年齢:14~16歳)。手掌多汗症・足底多汗症の症状は、時にしたたり落ちるほどの汗が出ます。手や足は、絶えず湿って指先が冷たくなっていることが多く、書類やノートに汗じみができたり、携帯電話などの破損につながる例も多くなっています。足底多汗症の場合は”臭い”が出ることも多く日常生活への影響も大きいです。

原因

精神的緊張により、交感神経が刺激されることが主な原因となっています。誰でも緊張すると手や顔にかきます。疲労や継続的なストレスなどがあると、自律神経が不安定になり、些細なことで交感神経が刺激されます。また、体質的に交感神経が優位になりやすい場合もあります。

 

頭部顔面多汗症の症状と原因

頭部顔面多汗症の発症年齢は、21.2歳で、男性に多く見られ、長期間継続する傾向があります。耳の上部から側頭部・後頭部、額などに大量の発汗をします。額の汗がしたたり落ちるほどになることもあり、日常生活や対人関係に支障をきたすことも多いです。

原因

人間の脳は細胞活動が活発なので、頭部に熱を持ちやすく、そのため脳に近い額や顔の汗腺から放熱されることが多いのです。精神的緊張により、交感神経が刺激されると頭や額から発汗しやすくなります。また男性ホルモンは発汗を促進する働きがあります。情動的な刺激は、男性ホルモンの分泌を活発にして発汗を増やします。

 

腋窩多汗症(えきかたかんしょう)の症状と原因

腋窩多汗症の発症年齢は、19.5歳で、思春期から20代半ばまでに発症するのがほとんどです。男女差はほとんどありませんが、やや女性に多いようです。衣類の腋部分が汗じみで黄ばんだり、特有の臭いのために社会生活に支障をきたすことも多いです。

原因

腋(わき)には、体温調節の発汗のためのエクリン腺と、性ホルモンと関りの深い臭いと発汗のためのアポクリン腺との両方があります。ですから、腋窩多汗症(≒ワキガ)は汗の量と臭いの問題があり、それらの原因は大変複雑です。

精神的ストレスなど自律神経の乱れによる原因、性ホルモン分泌の乱れによる場合、食生活や生活習慣が原因の場合と、腋窩多汗症の症状と原因は実にいろいろです。腋窩多汗症で特に臭いが強い場合を一般的に「ワキガ」と呼ぶことも多いです。ワキガ体質はアポクリン腺の数が遺伝的に多いことが原因です。

 

4.多汗症の治療

多汗症では汗をかく場所も原因もいろいろです。症状の重症度によっても治療法は異なります。ここでは、主に日本皮膚科学会 原発性局所多汗症ガイドラインに沿って、大まかに治療法を紹介します。多汗症と診断された場合の治療です。交感神経遮断術による治療は、神経を遮断してしまう手術なので、代償性発汗という副作用が発生する可能性が高いと言われています。よく相談する事が必要です。

手掌多汗症の治療

  1. 塩化アルミニウム溶液(20-50%)を塗る治療
  2. イオントフォレーシスによる治療(水に電流を流す装置で治療する方法)
  3. ボトックス注射による治療
  4. 交感神経遮断術による治療(条件付)

他に併用療法として、神経ブロック治療・レーザー療法・精神療法などもあります。

足底多汗症の治療

  1. イオントフォレーシスによる治療(水に電流を流す装置で治療する方法)
  2. 塩化アルミニウム溶液(20-50%)を塗る治療
  3. ボトックス注射による治療

他に併用療法として、神経ブロック治療、レーザー療法、内服療法、精神療法などがあります。

頭部顔面多汗症の治療

  1. 塩化アルミニウム溶液(10-20%)を塗る治療
  2. 内服療法(抗コリン薬:商品名 プロバンサイン)
  3. ボトックス注射による治療
  4. 交感神経遮断術による治療(条件付)

他に併用療法として、神経ブロック治療・レーザー療法・精神療法などがあります。

腋窩多汗症の治療

  1. 塩化アルミニウム溶液(10-35%)を塗る治療
  2. ボトックス注射による治療 ※一定の条件を満たすと保険適用される所もある
  3. 剪除法による汗腺除去手術 ※一定の条件を満たすと保険適用される所もある

イオントフォレーシスについては考慮してもよいとされています。

多汗症の治療のまとめ

腋窩多汗症をはじめとして、メスで切らずに治療する新しい方法を導入している専門医もあります。汗腺を電気で固めたり、レーザー光線やマイクロ波を使って汗腺を破壊したりする治療もあります。それらの多汗症治療は、美容外科や形成外科で導入されていることが多いようです。費用や効果もそれぞれによって異なりますので、事前に調べるなどして確認をしましょう。

多汗症は種類も原因もいろいろです。中には体質や遺伝的要因もありますが、精神的要因によることも非常に多いのです。多汗症を軽減するためには、運動不足や生活リズム、食生活などの生活習慣を見直すことが大切です。